2019.07.12 ・  /

シャープナーと砥石の違い

シャープナーを使用した場合と、砥石で研いだ後の刃先の状態を比較しています。

シャープナーは砥石の代わりにはならない

最近では簡易的に研ぐことを可能にしたシャープナーが数多く出回っており、藤次郎株式会社での取扱いもあります。

シャープナーは便利な道具ですが、注意すべきデメリットもあります。
実は、シャープナーの本質は刃先を研ぐことではなく、刃先を荒らすことにより一時的に食材への食いつきをよくするもので、砥石による包丁研ぎ直しの代わりとすることはできません。

シャープナーでの研ぎのみに頼っていると、刃先の強度が極端に落ち、刃割れや刃欠けの原因になる場合もあります。

シャープナーの上手な使い方

普段調理に使用している包丁の切れ味が落ちたと感じた場合など、「今すぐ切れ味を良くしたい」と思うタイミングがあると思います。
砥石を使う時間がなく、一時的に切れ味を戻したいとき、是非シャープナーをお使いください。
ただ、上で述べたとおり、包丁のメンテナンスにはなりませんので、月に1〜2回程度は砥石で研いだり、包丁研ぎの専門店などに出すことをお勧めします。

回転式砥石のシャープナーや電動式のシャープナー、水砥式のシャープナーなど種類はさまざまですが、基本は同じことが言えます。
また、種類によって、包丁を押し引きしたり、一定方向に引いたりと、使い方が異なりますので、ご使用の際はお気をつけください。

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同じように見えても全く違う刃先の状態

それでは実際にシャープナーで研いだ場合と、砥石で研いだ場合の違いがどれだけあるのか刃先の拡大写真で比較してみましょう。

新品の包丁の刃先

新品の包丁の刃先

新品状態の刃先は非常に綺麗なことが分かると思います。
これは「刃付け」という刃を整える段階において、数多くの工程をかけて丹念に仕上げているからです。布や皮・ビニールなどの素材でできた専用のバフという道具を段階的に替え、いくつも使うことによって、最終的に刃先の傷が全く無い状態にしていきます。

弊社で研ぎ直しを行った場合も同様の刃先になります。是非研ぎ直しサービスをご利用頂くことをお勧めいたします。

刃先が丸まった状態

刃先が丸まった状態

使用していくうちに徐々に刃先は磨耗していき、先端部分にも日頃の使用による傷が多くなります。刃先が丸まっているので全く切れ味は良くなく、食材の断面も汚く荒れることから、魚や肉など生臭さが際立ってしまう状態になります。

また、細かい傷により刃欠けや刃こぼれも発生しやすくなります。また、この状態になるまでの期間は使用する状況によっても変わってきますが、一般的な家庭での使用で大体1ヶ月程度が目安となります。

ロール式シャープナーで研いだ場合

ロール式シャープナーで研いだ場合

簡易式のシャープナーでも比較的優れているロールシャープナーで研いだ場合の刃先です。刃先はギザギザでノコギリのようになっています。一時的にこのノコ刃の効果で食材への食い付きが良くなり、切れ味が良くなった錯覚に陥りますが、実際刃先は痛んでおり、長く使用すると一層刃先が丸まっていきます。

ロール式シャープナーは交差式のシャープナーに比べ、砥石への当たり方が砥石で研いだ時と同じ方向になることから、交差式に比べ効果が高くなりますが、砥石の角度が決まっているため、場合によっては刃先に砥石が当たらない可能性があり、自分の包丁の角度と砥石が合っているか確認する必要がある場合もあります。

交差式シャープナーで研いだ場合

交差式シャープナーで研いだ場合

砥石が交差しこの間に刃を差込み研ぐ方式のシャープナーは構造も簡単なことから、比較的安価に手に入ります。

しかし、写真を見ると分かるように横方向の傷が多くなっており、また、研ぎによるバリがそのまま残っています。刃先部分のみしか砥石が当たらないため、一方的に刃先の薄い部分のみが削り落とされ、より一層刃先の丸まりが進み、刃先に段差が発生し、切れ味はさらに悪化します。

刃先角度の設定が鈍角な包丁などには使用できますが、切れ味に優れる包丁は切れ味が悪くなるだけでなく、包丁自体を痛める結果になるため使用しない方が良いといえます。

中砥石(#1000)で研いだ場合

中砥石(#1000)で研いだ場合

砥石で研ぐと刃先の傷が細かくなっていることが分かります。簡易式シャープナーなどに比べ刃先の全体に対して砥石を当てることができることから、刃先全体をくさび形にすることができ、きちんとした刃先が仕上がります。

一般的な家庭で使用するのであれば、中砥石で研ぐだけで良い刃が付いていることが分かっていただけると思います。

仕上げ砥石(#4000)で研いだ場合

仕上げ砥石(#4000)で研いだ場合

仕上げ砥石は、中砥石で研ぎ直した時にできた細かい傷を綺麗にするだけでなく、包丁の刀身の構造のページでも解説した通り、小刃を付けることにも用います。

この小刃は刃先の強度を上げる役目を持っており、中砥石のみで仕上げた刃先よりも永切れする包丁に仕上げられます。同時に刃先の傷も少なくなるため、刺身などを切った場合の切断面も綺麗になることから、よりおいしい料理を仕上げることが可能になります。

超仕上げ砥石(#6000)で研いだ場合

超仕上げ砥石(#6000)で研いだ場合

仕上げ砥石よりも番手が上がった超仕上げ砥石は、一般的に刀などの仕上げ用に用いられますが、もちろん包丁に対しても有効です。仕上げ砥石よりもさらに刃先の傷が少なくなり、ほとんど新品の包丁に近い状態であるのが画像で分かっていただけると思います。一般的な使用ではここまでする必要はありませんが、それでも包丁の寿命は圧倒的に長くなります。