日本ほど包丁の種類がある国はありません。これは歴史と食へのこだわり、そして文化の違いが根底にあることはいうまでもありません。様々な食材への感謝の気持ちが包丁にもこだわりを生み、素材ごとに専用の包丁が存在するといっても過言ではないほどの発展を見せています。
日本の包丁に比べて海外の包丁は道具として割り切られている面が強く、種類はそれほど多くはありませんが、明治時代の文明開化以降、もともと牛肉を食べる文化の無かった日本は、海外の包丁を自然に取り入れる土壌が整っていたといえます。文明開化は食文化にも大いなる影響を与えてきました。食が西洋化すると同時に、奥ゆかしい和食が徐々に人々の生活から遠ざかっていったのです。
戦後の高度成長期には洋包丁と和包丁の良いところを組み合わせた「文化包丁」や「三徳包丁」が生み出され、家庭に普及すると同時に、食に対するこだわりが徐々に薄れ、食の価値が失われ始めていきます。
現代に入り、食を見直す「スローフード運動」や国を挙げての「食育」の活動とともに、世界的にもヘルシーさから和食が見直され始めています。様々な和食の道具とともに、食への意識を高め、食の価値を再び高める時代がやってきているのではないでしょうか。
日本・海外の様々な包丁の種類を見ていただき、日本と海外の違いや、先人の食へのこだわりを再確認をしてもらうと同時に、自分の包丁にはどのようなものがいいか、なども考えていただけると幸いです。
包丁は調理の上で調理人の気持ちが反映される、非常に奥の深い道具です。是非、選ぶ際、また使用される際にその奥ゆかしさと、先人の食材に対する気持ちを感じ取ってください。