2021.07.21 ・ イベント・展示会 / スタッフブログ
ナイフアトリエの職人が製作したオリジナルナイフの開発ストーリー第三弾をご紹介いたします。
7/12の「ナイフの日」に向けて、藤次郎ナイフアトリエの職人達がオリジナルナイフを製造しました。その開発ストーリーをお届けします。
今回の開発ストーリーは
ナイフアトリエの職人歴4年目の伊藤です。
伊藤は自宅にもナイフを作れる道具が揃っている程ナイフ作りへの気持ちが熱い職人で、普段もプライベートの時間を使ってオリジナルナイフを製作しています。
今回伊藤は、かつてアイヌ民族が日常生活の中で様々な用途に用いていた短刀をアレンジし、現代での野外活動に適した、1丁で幅広い用途に対応出来るナイフを作ろうと決めました。
アイヌ民族が使う短刀を「マキリ」と呼び、より大きな形状のナイフは「タシロ」と呼ばれていました。これらの形状をモチーフに、大小2丁のナイフを作っていきます。
鋼材はナイフ用の鋼材として主流になっているATS34を使用。非常にバランスの優れた鋼材として知られています。
まずは図面に合わせて鋼材を切り出した後、余分な部分を削ります。
鋼材を削り終えたら、ナイフに穴をあける作業です。この小さな穴は後ほどボルトが入る位置で、大きな穴は全体の軽量化のために開けています。この一手間を加えることで扱いやすいナイフに仕上がるのです。
焼入れで鋼材を粘り強くした後は、研削の工程です。焼き入れしているので刀身の表面が黒くなっていますが、表面がキレイになるように磨いて形を整えます。そして水砥で薄く研いでいくことで刃がつき、ようやく切れるナイフになります。
これで、刀身部分の工程は完了です。
細部までオリジナルに近づけるために、当時からアイヌ民族に使用されていた”板屋楓(いたやかえで)”を使用してハンドルと鞘(サヤ)を作ります。
まずは板を予めデザインしておいたハンドルと鞘の形に切り出していきます、板の余分な箇所は根付(ねつけ)と呼ばれる留め具として使用するため、合わせて切り出しを行います。
こちらがタシロ(大)
こちらがマキリ(小)
こちらが、端材で作った根付です。根付とは江戸時代に印籠や巾着などを着物の帯から紐で吊るす時に用いられた留め具のことです。
まずは鞘の部分を作っていきます。
鞘作りは初めてで、勝手が分からず難しかったそう。
そして驚かされたのが、鞘を作るために必要なノミ2丁と小刀も自分で作ってしまったそうです。そのため、準備にとても時間がかかったとのこと。
ここからようやく鞘作り開始。
鞘の内側をノミで掘ったあと小刀で削り、刀身が収まるスペース作っていきます。
鞘を貼り合わせる際に使用するのは続飯(そくい)と呼ばれる米粒を潰したデンプンのりです。
当時のアイヌ文化を意識し、化学接着剤をあえて使わずに作業を進めていきます。
鞘を貼り合わせたら、ヤスリで形を整えていき、根付を取り付けます。
これでタシロの鞘づくりは完成です。
マキリも同様に鞘を作っていきますが、図面通りに仕上げた鞘は重心のバランスが悪くハンドルが下を向いてしまったので、打開策としてサーミ式の鞘の作りを参考に黒いレザーを上から取り付けました。
さらにダッフルコートのボタンに使われる水牛角を根付として取り付けます。
これでマキリの鞘も完成です。
ハンドル材をボルトで固定し、鞘と同様に余分な部分を削ったあと形を整えていきます。
2丁ともハンドルが完成しました。
木材の着色は革用の染色液を使用しています。
また、アマニ油も表面に何度も染み込ませ、水をはじく効果とツヤが出るようにしてあるそうです。
これで、現代の野外活動にサイズ感を合わせたタシロとマキリが完成しました。
作業時間は1丁あたり20時間くらいだそう。数が多いにもかかわらず誰よりも早く仕上げていました。
持ってみるとどちらのナイフもちょうど良いサイズ感で刀身の耐久性もあるので、1丁あるだけでアウトドアの幅広い用途で使えそうな印象を受けました。
大小で得意不得意はあるものの、それぞれが頼もしい1丁に仕上がっています。
しかし伊藤はこれだけでなく、他にもナイフを用意していました。
途中まで作ってあったものを作品展示用に4丁仕上げたとのこと。
伊藤のナイフは、どのナイフも実用性・デザイン・クオリティがあり、見ていて飽きません。
将来は独立してナイフ作家を目指しているそうで、しっかりと今は技術と基礎固めをして、丈夫で使いやすいナイフを突き詰めていきたいと語ってくれました。
開発ストーリーPART.1を見る
開発ストーリーPART.2を見る
開発ストーリーPART.4を見る
開発ストーリーPART.5を見る
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※製作したナイフの販売や受注生産は行っておりません。予めご了承ください。
藤次郎オープンファクトリー
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