鋼とステンレスは兄弟、鉄はその親である
鉄も鋼(ハガネ)もステンレスも基本的には鉄を主成分にした材料です。実は世の中には純粋な鉄はほとんど存在していません。鉄は非常に化学変化を起こしやすく、他の物質と結びついた形で存在しています。
鉄を作るための原料である鉄鉱石や砂鉄は、鉄(Fe)と酸素(O)の化合物、酸化鉄(FeO)として存在しています。また、酸素(O)以外にも鉄鉱石や砂鉄の状態では少量のケイ素(Si)、マンガン(Mn)、リン(P)、硫黄(S)などの不純物を含んでいて、硬いけれどもろく材料としては使い物になりません。ちなみに刃物の材料として有名なスウェーデン鋼石などは元々の状態でこの不純物が非常に少ない鋼の母材です。
このためまず材料に使用するためには酸素(O)、および素材がもろくなる原因となる少量のケイ素(Si)、マンガン(Mn)、リン(P)、硫黄(S)などの不純物を取り除かなくてはなりません。
まず、酸素(O)を取り除くために炭素(C)のような酸素(O)と結合しやすい元素を還元剤に用いて1500度程度の高温で反応させて鉄を分離させ銑鉄を作ります。これが製錬工程で、古くは多々良などの釜を用い、砂鉄から玉鋼つくる工程で、近代的製鉄法では高炉によって行います。
その上で刃物や構造材など強度が必要な製品にするには、製錬工程で必要以上に混ざった炭素(C)をはじめ、不純物を減らさなければならず、そのために再度、酸化精錬して溶鋼を作ります。これが製鋼工程で、昔は鍛冶が今では転炉・平炉によって行います。この工程で炭素をはじめ他の元素を調節し、あるいはニッケル(Ni)、クロム(Cr)、タングステン(W)、モリブデン(Mo)、バナジウム(V)、その他の元素を人為的に加えたりして、鋼塊にします。
鉄・鋼の違いは、主に炭素含有量によって分類されます。刃物に使用される鋼(ハガネ)は炭素含有量が0.08〜2.0%で、それ以下の材料は鍛鉄または軟鉄と呼ばれ、柔らかく、焼き入れしても硬化しない材料です。鋼(ハガネ)以上に炭素(C)を含む材料は銑鉄または鋳鉄で、硬く脆いので鋳物の材料などに使用されます。
またステンレス鋼は、鋼の錆びやすい欠点を改善するため、クロム(Cr)を12%以上加え、さらに必要に応じてニッケル(Ni)、モリブデン(Mo)などを配合した合金鋼で、錆に強く、耐摩耗性に優れています。ただし元の鋼(ハガネ)の炭素量により焼き入れできる材料、できない材料とに分別され、洋食器などで広く使用されている18-8ステンレス鋼などは焼き入れしても硬くなりません。
ステンレス鋼自体は鉄の含有成分を調整した物であることから、鉄と全く違う材料ではなく、あくまでも鉄を調整した錆びにくい材料であること、またステンレス鋼でも炭素を含む焼き入れが可能な材料は、基本的に含まない材料よりも錆やすく、特に包丁は手入れに注意が必要です。




