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藤次郎株式会社
ハガネの科学

ハガネの科学

ハガネと一概にいっても、様々な種類があります。ハガネと一般的に呼ばれるものは鉄を炭素などを用い精錬・製鋼したものです。様々な鉄から生まれる材料がありますが、ほとんどが鉄を主材料とし、様々な成分の調整を行うことで特性を変えたものであり、鉄を主体にした材料は全て親戚といえ、ステンレスもその一種になります。

鋼とステンレスは兄弟、鉄はその親である

鉄も鋼(ハガネ)もステンレスも基本的には鉄を主成分にした材料です。実は世の中には純粋な鉄はほとんど存在していません。鉄は非常に化学変化を起こしやすく、他の物質と結びついた形で存在しています。
鉄を作るための原料である鉄鉱石や砂鉄は、鉄(Fe)と酸素(O)の化合物、酸化鉄(FeO)として存在しています。また、酸素(O)以外にも鉄鉱石や砂鉄の状態では少量のケイ素(Si)、マンガン(Mn)、リン(P)、硫黄(S)などの不純物を含んでいて、硬いけれどもろく材料としては使い物になりません。ちなみに刃物の材料として有名なスウェーデン鋼石などは元々の状態でこの不純物が非常に少ない鋼の母材です。

このためまず材料に使用するためには酸素(O)、および素材がもろくなる原因となる少量のケイ素(Si)、マンガン(Mn)、リン(P)、硫黄(S)などの不純物を取り除かなくてはなりません。
まず、酸素(O)を取り除くために炭素(C)のような酸素(O)と結合しやすい元素を還元剤に用いて1500度程度の高温で反応させて鉄を分離させ銑鉄を作ります。これが製錬工程で、古くは多々良などの釜を用い、砂鉄から玉鋼つくる工程で、近代的製鉄法では高炉によって行います。
その上で刃物や構造材など強度が必要な製品にするには、製錬工程で必要以上に混ざった炭素(C)をはじめ、不純物を減らさなければならず、そのために再度、酸化精錬して溶鋼を作ります。これが製鋼工程で、昔は鍛冶が今では転炉・平炉によって行います。この工程で炭素をはじめ他の元素を調節し、あるいはニッケル(Ni)、クロム(Cr)、タングステン(W)、モリブデン(Mo)、バナジウム(V)、その他の元素を人為的に加えたりして、鋼塊にします。

鉄・鋼の違いは、主に炭素含有量によって分類されます。刃物に使用される鋼(ハガネ)は炭素含有量が0.08〜2.0%で、それ以下の材料は鍛鉄または軟鉄と呼ばれ、柔らかく、焼き入れしても硬化しない材料です。鋼(ハガネ)以上に炭素(C)を含む材料は銑鉄または鋳鉄で、硬く脆いので鋳物の材料などに使用されます。
またステンレス鋼は、鋼の錆びやすい欠点を改善するため、クロム(Cr)を12%以上加え、さらに必要に応じてニッケル(Ni)、モリブデン(Mo)などを配合した合金鋼で、錆に強く、耐摩耗性に優れています。ただし元の鋼(ハガネ)の炭素量により焼き入れできる材料、できない材料とに分別され、洋食器などで広く使用されている18-8ステンレス鋼などは焼き入れしても硬くなりません。

ステンレス鋼自体は鉄の含有成分を調整した物であることから、鉄と全く違う材料ではなく、あくまでも鉄を調整した錆びにくい材料であること、またステンレス鋼でも炭素を含む焼き入れが可能な材料は、基本的に含まない材料よりも錆やすく、特に包丁は手入れに注意が必要です。

成分と鋼の特性

ハガネやステンレスは材料によって、内部の成分の配合の比率を調整し、様々な特性に合わせた多種の素材を作りあげます。以下の表はハガネに加えることで、素性が変化する元素を簡単にまとめてみました。参考にしてください。

炭素 (C) 様々な元素と化合物を作り硬さ強度を増す。オーステナイト結晶境界にクロム炭化物を析出し、粒界腐食を起こす。強力なオーステナイト化元素。
ケイ素 (Si) フェライト化元素であり、耐酸化性を増すが大量に加えると粘り強さが低下する。脱酸剤として使用される。
マンガン (Mn) セレン(Se)などと化合物を作り、被削性を増すので快削材に添加される。赤熱脆性を防止する。オーステナイト化元素でニッケル(Ni)の約半分の効力がある。ステンレス鋼の窒素(N)の吸収力を向上する。
リン (P) 熱間加工性を害し、機械的性質を劣化する。オーステナイト系鋼では適量の配合で熱間強度を増加させる。
硫黄 (S) 熱間加工性を害し、マンガン(Mn)、テルル(Te)、モリブデン(Mo)などと化合物を作り被削性を増す。
銅 (Cu) オーステナイト化元素。硫酸イオンに対し耐食性を改善する。析出硬化を示し強度を増す。ただし熱間加工性を害する。
ニッケル (Ni) オーステナイトステンレスの基本元素であり耐食性、熱間強度を増す。
クロム (Cr) ステンレス鋼における基本元素。フェライト化元素で12%以上加えると耐食性を著しく増す。また、熱間強度も向上させる。
ジルコニウム (Zr) チタン(Ti)と似た性質でフェライト化元素。硫黄(S)と化合物を作り被削性を増す。種々の化合物を作り熱間強度を増す。結晶の微細化にも貢献。脱硫黄効果が大きく、赤熱脆性を防止する。
ニオブ (Nb) 強力なフェライト化元素。炭化物を作りオーステナイトステンレス鋼の粒界腐食を防止する。耐クリープ性、熱間強度を増し、結晶粒度を微細化する。靭性を改善する。
テルル (Te) セレン(Se)の親戚の元素。被削性を増すが熱間加工性を害する。
鉛 (Pb) 被削性を増すがオーステナイトステンレス鋼では熱間加工性を困難にする。
アルミニウム (Al) 強力なフェライト化元素。ニッケル(Ni)などと金属間化合物を作り析出硬化を起こし強度を増す。13Crステンレス鋼に添加すると溶接割れを防ぎ、耐酸化性を増す。耐酸化性を増し脱酸剤としても使用される。
酸素 (O) 酸化物を作り加工性を害する。強度や靭性も害する。
窒素 (N) 強力なオーステナイト化元素。オーステナイト鋼の耐食性を上昇させる。高温強度を増すが、低温での靭性を害する。
水素 (H) 高ニッケル(Ni)ステンレス鋼の溶鋼中に多量に溶け込み、凝固時析出、ピンホールを形成しやすい。熱間加工時の毛割れの原因にもなる。
モリブデン (Mo) 被炭化物を作り焼き戻し抵抗性を増す。熱間強度、耐クリープ性をを増す。硝酸イオンに対し耐食性を改善する。
バナジウム (V) 強力なフェライト化元素。焼き戻し抵抗性を増す。二次硬化を示し、粘り・強度を増す。高炭素ステンレス鋼においては結晶粒度を微細化する。炭化物を作り耐クリープ性を改善する。
タングステン (W) 強力な炭化物を作り、焼き戻し抵抗性、強度、熱間硬度を増す。高速度鋼などに用いられる。
コバルト (Co) 著しく耐クリープ性を増す。素地を硬化し炭化物の脱落防止に寄与する。
ヒ素 (As) 熱間加工性を害する。
錫 (Sn) 熱間加工性を害する。
ボロン (B) 粒界に析出し熱間強度を増す。添加量が微量で過時効を抑制し耐クリープ性を増す。酸素(O)と窒素(N)との親和力が強く、安定した添加が難しい。結晶粒微細化、熱間硬化性を向上させる。
チタン (Ti) 強力なフェライト元素で安定した炭化物を作り、オーステナイトステンレス鋼の粒界腐食を防止する。炭化物、金属間化合物を作り耐クリープ性強度を増す。析出硬化して強度を増す。結晶粒を微細化する。酸素(O)、窒素(N)と化合しやすく清浄度を害しやすい。
セレン (Se) 被削性を増す。
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